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自作の小説等を置いていったり、読了した本の感想をほんの少し書いたりしていきます。
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四章、眠る真実……其の一


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 狂気と恐怖の間に、
 その真実は眠る。
 恐怖と逃避の間に、
 その虚実は立ち塞がる。


 翌日、昼は午後二時を回った頃。僕は、吉川医院の受付で、名前を呼ばれるのを待っていた。お年寄りが多くて、退屈だが、どうせ帰っても何もない。誰とも遊べない。
 それに、吉川先生と話したいこともある。神田さんもいるそうだ。今日は、診察と事件の聴取、両方を兼ねているのだ。
「叶田友彦さん」
 名前が呼ばれる。僕は、受付の隣にある扉を開き、吉川先生と対面した。
「こんにちは、叶田くん」
「どうも」
 診察室ならどこにでもあるような回転椅子に座り、僕は吉川先生を見つめた。この人は、意外にも僕の友達の内、三人と関わりがある。天地の弟の治療をし、茂木の母の治療をし、そして佐倉とも仲が良かったのだ。
「先生は、僕の友達のこと、良く知ってたんですね」
「……よくって程じゃないよ。患者としてこの町の多くの人と関わって来てるし、皆その内の一人なんだ。……それに、私はそれほど誇れた医者じゃない。救えない命だって多い……」
 悟くんと、茂木の母親のことを言っているのだろう。不治の病、か。本当にその病は、治らないのだろうか。……いや、ここが小さな病院だからこそ、救えないのだ。天地が言ってたそうじゃないか。治せるかもしれない、と。……つまり、きっと大病院でなら助かる確率は高いのだ。ここが設備の少ない病院だからこそ、救えない命が多い……。
 そしてそのことを、吉川先生は悔やんでいるのだろう。
「……まあ、とにかく診察だよ。その後、具合はどうだい?」
 吉川先生は、笑顔を繕って聞いてきた。
「おかげさまで、問題なく過ごせてます」
「計算が出来なくなったり、物の使い方が分からなくなったりもしてないかな?」
「ええ。全く」
「よし。なら大丈夫だろう。CTだけ、一応撮っておこうか。あの、奥の所を右に曲がってくれたらCTを撮る部屋があるから」
 吉川先生は、体を捻ってその場所を示してくれた。僕は、一つ頷いてそこへ向かう。奥には、助手の看護婦さんがいた。……谷あやめさん、だろう。
 背が低く、それでいて容姿は整っている。その為、見た目がぐっと若く見えた。長い黒髪を後ろで留め、ポニーテールにしている。衣服は看護婦のそれだった。
「谷さんは、佐倉と仲が良かったらしいですけど。どうしてなんですか?」
 僕は、唐突ながらも、聞くなら今しかないと思ったので聞いてみた。
「そうね。佐倉くんが医者を志してたから、私と話したがってたの。ほら、吉川先生は忙しいでしょ。だから、私ならたくさん話せると思ったんだと思うわ」
「ああ……」
 一応は納得した。だが、谷さんも十分に忙しそうではある。受付も交代でしているようだし、話を求められるのは困っただろう。
「じゃ、この部屋に入ってね」
「あ、はい」
 僕は促されるままに、CT検査室へ入った。この機械が、吉川医院にある機械の中で、一番高いものだろうな。
 指示通りに、寝台に横になって、検査が開始される。丸い穴が開いたような形の機械の中に寝台が動いて行き、頭部のCT画像が撮られる。この間ほんの数十秒だ。そして、頭部全てが撮り終わるまでに一分程。ほんの数分でCT検査は終了した。
 寝台から起きあがると、ガラス越しにある隣の部屋から、谷さんが声をかけてきた。
「じゃあ、CTは終了です。受付で待っていてください」
 その指示通り、僕は検査室を後にした。

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