自作の小説等を置いていったり、読了した本の感想をほんの少し書いたりしていきます。
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病院からの帰り道、僕は川沿いの道を歩いていた。十字路を曲がり、美しい水面を眺めながら、僕は軽い上り坂を上っていく。
そういえば、この川の下流で、波田の死体が発見されたのだったか。橋がある場所の辺りなので、彼女の死体があったのは、三ツ越と同じく十字路の近くだということになる。
「橋、か。何で波田は、突然こんな場所で、死体で発見されたんだろうな。これにも天地が関わっていそうだし、やっぱり天地は怪しい、か……」
波田殺しと三ツ越殺しという、最初の二つの事件で最も怪しいのだから、残る事件での疑惑も自然に沸いてくる。少なくとも彼は、事件に関わっている者の一人には違いない。一体彼は、あの事件でどんな役を演じたのだろうか。そして彼は、本当に皆の命を奪ったのだろうか……。
「あら、叶田くん」
視線を前に戻すと、そこには女性の姿があった。あの人は、……波田の母親か。
「どうも、こんにちは。買い物ですか?」
「ええ、ちょっと遠くまでね。この辺り、スーパーがないから……」
ここは町はずれなので、しばらく歩かなければコンビニやスーパーがない。そういった店が揃っているのは町の中央で、そこへはあの十字路を直進すれば行くことが出来る。
「叶田くんは、病院にいってたのかしら?」
「ええ。傷はいいんですけど、ちょっと聞きたいことがあったので」
「そう……。傷が治ったのは良かったわね」
「はい。ありがとうございます」
そんな軽い会話で終わり、波田夫人は立ち去ろうとしたのだが、僕は少し聞きたいことを思いつき、夫人を呼んだ。
「あ、あの、波田さん。ちょっといいですか?」
「あら、何かしら?」
夫人は立ち止まってくれた。
僕は少しためらいがちに、一つ聞いた。
「……波田は、友達のこととかよく、家で話してたんですよね」
「ええ」
「じゃあ、その。恋愛関係というか、そういうことも話してたんでしょうか……」
「……え、ええ。……たまに、話してましたけど……」
「……なら、波田さんは、どう思いますか? 僕ら七人の内、誰かが事件を起こしたって、思えますか……?」
それは、天地と三ツ越の関係を聞くものでもあった。そして、彼が犯行に至る決意を出来るのかどうかを。
そして、他の皆にとっても……。
夫人は、少し目を閉じてから、答えてくれた。
「……私は、誰も疑えないわ。だって、楽しそうに歩実が話してた、あなた達のことなんて。咲妃ちゃんも、茂木くんも、佐倉くんも、嘉代子ちゃんも、天地くんも、あなたも、……それに歩実も」
「……」
「歩実は、本当に沢山のことを話してくれたわ。誰が誰の事を気にしてるかとか、そういう話もね。楽しそうに話すものだから、私もついつい聞いちゃって……。プライベートなことなのにね。でも、歩実は自分のことだけは、話さなかったなあ。それだけは、恥ずかしそうにずっと隠してて……」
それはそうだ。年頃の女の子だったのだから。おしゃべり好きで、姉貴分で、それでも実は、恥ずかしがり屋な波田。……目を閉じてその顔を思い浮かべると、涙が溢れそうになって、僕は首を振った。
「……その、聞きたいんですが。……天地くんのことについては、どう言ってましたか?」
「天地、くん……」
天地。彼の心。その真実は、果たして如何なるものなのか。
「……あの子のことは、面白がってしょっちゅう話してたわ。分かりやすいんだからって。……あの子は、そう」
夫人は一つ、息を吐いた。
「……嘉代子ちゃんのことを、本当に好きだったみたいね」
――ああ。
――やっぱり、そうだったんだね。
「例えどんなことがあっても、そういう心を持った人っていうのは、絶対に」
――その人を殺すことなんて、出来やしない――。
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Battle Field――近未来系ミステリ。毒から身を守るために作られたシェルターの中で生きる人々。そんな世界の小さな村で、幼い彼らの元へ訪れる災厄。王道(?)のフーダニットです。
Memory Modification
――異色ミステリ。その日は幸せな一日だったのか。主人公、叶田友彦は、自らに問う。
双極の匣
現在執筆中。四部編成の長編ミステリ。平和だと信じて疑わなかった村の、秘められた闇とは。
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1992/10/26