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自作の小説等を置いていったり、読了した本の感想をほんの少し書いたりしていきます。
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#8.Elegy_雪_3


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 もう、人影を見る事が珍しい。…生きている者はあと、何人いるのか。
 ノトスは思う。…楽に終わる仕事などではなかった。いや、この計画を困難なものとしているのは、このシェルターに渦巻く、複雑な因果関係のせいだ。
 どうしてこのシェルターにはここまで、悲しみの種が多く存在するのだろうか。…今日のこの日になって、ためらいながら殺人を犯すくらいなら、…最初から無関係の人間ばかりがいるシェルターを選べばよかったものを。
「…いや、俺もその一人だけど……」
 ノトスは力なく笑う。あのいけすかない笑みは何処へ行ったのか、…ゼピュロスが殺されてからの彼は、まるで別人だった。
 ノトスは、中に誰がいるかを確認した後で、このシェルターを選んだ。彼には、会いたい人がいたのだ。…もしかすれば、殺したい相手か。
 犯罪者移民制度は、十数年前に更新された。犯罪者から生まれた子供も犯罪者と同じように隔離して生活させる…ただし逮捕後に限る。それが変更点。
 つまり、子供が生まれた後罪を犯したら、…子供と一生会えずに、隔離され生活することになるということだ。
「…どうして、俺を置いて行ったのか。…答えは、分かってたけどさ」
 ノトスは聞いた。…両親に。しかし、結果は思っていた通り、…生活に困窮していたから、だった。…だから心苦しくも、引き金を引いた。
「…俺だって、あんたらと暮らしたかったんだよ。…そしたら、今こんなことしてないのにさ」
 今言っても遅いことだ。自分は殺人の実行犯で、もうすぐ事件は終わるのだから。……この悲しいシェルターの物語は、死屍累々の最悪の結末を迎えるだろう。
 ならばせめて、最後に思うのは。
「…春香の仇……。意味なんてないけど、…俺の気持ちが、収まらないからな」
 ノトスはもう、諦めがついたらしい。…自分も生きて出られるか分からないこのシェルターで、最後に零音を殺す事を決意する。
「…はは。それはもう死ぬな。なにせ、あの人が許さないから。…あの人がいるから、こんな悲しい物語になったんだ。…いや、あの人が、いちばん悲しいんだな……」
 ノトスは一人呟く。…誰の事を言っているのか。多分、彼の雇い主のことだろう。…それ以上は言わず、彼は歩く。…誰かの家を目指してるようだった。
その家は、……。
「おい」
 ノトスは、そこに座っている者に声をかける。
「……手を貸せ。最後に芹沢零音を殺す。…春香が殺された。仇打ちだ。…後であの人に殺されても構わない。だから、手を貸してくれ」
 ノトスは彼を見つめる。今日までに何度か話したが、ついに仲良くなれなかった、……彼を。
 彼は笑う。快く承諾してくれたのだろうか、そう思った。
 けれど、それは違う。
「……お生憎」
 高らかに、銃声が響いた。それと同時に、ノトスの腹部から血が飛び散る。
「ふ、…ぐぁ……ッ!?」
 腹を押さえる。その手に血がべっとりとつく。信じられなかった。何より、彼が、銃を持っていたことが。
「…お、前……」
 何を訴えることもできず、ノトスは、能登一哉はばったりと倒れる。
 それを上から、ただ無表情で見つめている彼。…そして彼は、能登の背中を踏みつける。
「…が…ァ…」
 やがて、ノトスは、息絶える。…苦痛と悔しさに涙しながら。
 その最期を見届けた彼は、一言呟く。
「…いつまでも弟扱いするなよ。手駒になってやったのに」

 その家の壁は、崩れていた。
 

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Battle Field――近未来系ミステリ。毒から身を守るために作られたシェルターの中で生きる人々。そんな世界の小さな村で、幼い彼らの元へ訪れる災厄。王道(?)のフーダニットです。
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――異色ミステリ。その日は幸せな一日だったのか。主人公、叶田友彦は、自らに問う。
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現在執筆中。四部編成の長編ミステリ。平和だと信じて疑わなかった村の、秘められた闇とは。
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