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―それは、一つの苦悩。一つの怒り。一つの恨み。
それが一つの不純要素。歪みを生み出す動き。
敵であって味方でもある。いやむしろ、敵でも味方でもない。
それは悲しみに狂ってしまった悲しい少年。
それは全てを壊す悲しい殺人者。
零音は銃声を聞くが、判断力も無くし、何処から聞こえた音なのか、そして誰が死んだのかを特に気にもしなかった。…そのうち自分も死ぬんだろう。そう思いながら歩く。
あてもなく歩いていると、自分が何処にいるかが分からなくなってしまいそうだった。零音は顔を上げ、今いる場所を確認する。
朝霧の家の前だった。…壁が壊れている。そこから光が漏れていた。
「…あそこで、休むかな……」
休むというよりは、待つと言った方が良かったかもしれない。犯人に会って、…それからは流れに身を任せようと思っていた。
そして、壊れた壁から、朝霧の家へ入る。そこには…。
「…ッ!?」
唖然とした。…それは、死体……。
「ノ、トス……?」
青い髪。ノトスに間違いない。腹から血を流して死んでいる…。どうしてノトスの死体がここにあるというのか。…さっき平山を殺したのは、間違いなくノトスだったはずだ。…それが、十分もしない間に、…こんな…。
ノトスの血は乾いていない。それどころか、今も流れ続けているのかもしれない。…つまり、殺されて時間が経っていないということ…。
「…そうだ、また銃声が鳴ってた…。なら、アネモイの銃じゃないってことだ…。……どういうことだよ、…。もう、訳分かんねぇ…」
ノトスは他殺だ。そして、アネモイは四人とも殺された。…つまり、犯人は全て、死んだということじゃ、ないのだろうか……?
ボレアスも、エウロスも、ゼピュロスも、そしてノトスも死んだ。…そして仲間も皆、死んだ。…たった一人を、除いて。
「……おいおい……」
冷や汗。…あり得ない想像。けれど、答えはもう、見えている。…もう、それ以外に、ない…。
彼は、ノトスを殺した。…だが、…ノトスなら、部屋の中までわざわざ入ってきて、返り撃ちにあうだろうか。…どうしても、そんな気はしなかった。そして、…彼がノトスを殺したなら、…彼はどうやって銃を…。
ならば、何かあるはずだった。…ノトスがここで殺された理由が。
「…ノトス…」
零音は、ふと気付いた。ノトスが自分の左手を、右手で強く握っているのを。…いや、左手の、薬指を…?
「……悲しすぎる。…どうしてこんなことに、なったのか…」
九年の歪み。計画されていた終焉。それは、最悪な結末を迎える。
零音は、ノトスの左手の指輪をとってみる。ゼピュロスの指輪と同じように、その指輪にも、イニシャルが書かれているだろう。
「……は、…?」
K.N。それが書かれているはずだ。彼はあの時、やけに強調して、自分を能登一哉だと言ったのだから。
…しかし、書かれているイニシャルは、それとは違う…。
『K.A』
意味するところは、一つしかない。そんな馬鹿な。じゃあ、あいつは、……。
零音は理解する。やっと、理解する。…彼は、…ノトスの…。
「……滅茶苦茶だ…」
この事件は、本当に悲劇だ。…零音はそれを、理解する。どうしてこんなに悲しい戦いを、続けなければならなかったんだ。
零音は、朝霧の部屋からマジックを取り出し、同じく部屋から白い紙を取ってきて、…そこに文字を書く。
それを机の上に置いて、零音は歩きだした。……それは、思いつきだったが、…彼は最後に、乗ってくれると信じていた。
少し経って、一人の少年が現れる。そして机に置いてある紙を訝しげに取った。
そこにはこう、書かれていた。
『空の緑は、僕らのシェルター。地上の緑は、僕らの約束の場所』
Memory Modification
――異色ミステリ。その日は幸せな一日だったのか。主人公、叶田友彦は、自らに問う。
双極の匣
現在執筆中。四部編成の長編ミステリ。平和だと信じて疑わなかった村の、秘められた闇とは。
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