自作の小説等を置いていったり、読了した本の感想をほんの少し書いたりしていきます。
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家の中は真っ暗だった。三人は慎重な足取りで、玄関をあがる。ここも家の構造はほとんど変わらないので、部屋の配置などはすぐ分かった。
子供部屋の扉が閉まっている。まずはそこを、ゆっくり開けてみる。
「……誰もいない…?」
「…いや、…下にいるよ」
零音が床を指さす。そこには、…乱暴に投げ捨てられたかのように、腕や足を曲げた死体が、二つ…。
「ひゃッ…」
雪が小さく悲鳴を上げた。…その二人は、東の両親だった。
「…やっぱり朝霧が言ってたように、生き残りは先生と子供だけなんだな。……もう、五人しかいないけど…」
その五人の内、…二人はどこにいるか分からない。数に入れてもいいものなのか。…いや、入れなければ、…生きているのはたった三人ということになる。そんなことは、認めたくはなかった。
東の両親は、頭部を撃ち抜かれて死んでいる。死んでいる人のほぼ全てが、綺麗に額を撃ち抜かれて死んでいるのに、…どうして舞宮だけ、あれほど残酷な所を撃たれて殺されていたのか…。
「…? どうして東の親は、…東の部屋で死んでるんだ…?」
そう、ここは、東の部屋だった。なのに東の親は、…ここで並べられるようにして死んでいる…。
「…わかんない…」
考えても分からないことだった。…二人がどう逃げたにせよ、…結末は死だったのだ。
三人は子供部屋を出る。そして、リビングへと向かう。
「…!?」
その時、人の気配を感じる。リビングに、人がいた。しかし、暗くてよくは見うない……。
だから零音は、電気をつけた…。
「動かないで!」
「誰だ!」
その声は同時だった。構えた銃がお互いの顔を狙い、…数瞬遅れて、零音が対峙する者の姿が照らされる。
その姿は、零音と同じくらいの背丈。…そんな人は一人しか、いない…。
「あッ……、あず、ま…?」
零音が呆気にとられ、銃を降ろしてしまう。…あり得ない光景だった。東が、…零音の親友が、彼に、銃を向けている…。
「お前……、ど、どうしてだよ……ッ!」
零音は吠える。彼が裏切ったことの苦しみに耐えきれず。そして、彼の姿に耐えきれずに。
「どうして! …そんなに血塗れなんだよッ!」
東の顔も、服も、至近距離から浴びたと思わしき血が、大量についていた。その血が未だ深い赤の光を放っていて、それを浴びてまだ時間が立っていないことが分かる……。
答えは、聞かなくても分かった。…しかし、認められるはずがなかった…。
「お前、が…、舞宮を…、…」
否定してほしかった。彼がそんなことをするなんて、…認めたくなかった。
「……撃った。殺し」
東の頬を、零音が殴った。懇親の力を込めて殴ったのだろう。東は銃を落とし、倒れ込む…。
「ふざけんなよッ! どうしてだ! どうして! なんで殺したんだッ! 大切な、仲間を…! お前は命がどんだけ重いかわかってんのかよッ!?」
口を切ったのか、口元を拭い、銃を取って、東は、立ち上がる。
「分かってるよ! 命の重さくらい! 俺がどれだけのことをしたかくらい、分かってるんだよ…ッ! でも、でも…、替えられないんだよ。自分の、…大切な人の、命には…」
その顔は、血と涙で滅茶苦茶だった。複雑に絡んだ感情が彼の顔を歪める…。
「お前、……まさか」
その言葉は、遠まわしに訴えていた。彼がどうしてこんなにも苦しんでいるのか、その理由を。
「ええ、東くんは役に立ってるわよ。…ねぇ」
東の後ろに現れたのは、…緑色の髪の、ゼピュロス。彼女は、東を嘲笑しながら、彼の頭に銃を突きつけた。
「……」
東の顔は青ざめている。そしてその銃は服従の証。再び彼は、零音に銃を向ける…。
「…そういう、ことかよ……」
零音は歯を食いしばった。…分かってあげられなかった不甲斐なさと、…ゼピュロスへの、…アネモイへの怒りが、彼の腕を震わせる。
ゼピュロスは、急かす。東に、更なる罪を、犯させようとしている。…こめかみに、銃を抑えつけられる。…ぐりぐりと。それが東を更に恐怖させる…。
「許してよ……誰も死んでほしくないんだよ……でも、殺さなきゃ、殺されるんだよ…嫌なんだよ…」
涙を溢れさせて、銃の引き金に、指をかける東。…体が震えていて、心がまだ拒否を続けているのが分かる。…殺さないで。大切な仲間を。
「…東、くん…」
関先生が、乾いた口を開く。
「……両親は、そこにいたわ…」
東が、目を開く。そんなはずはない。…そう言うかのように。
零音は、関先生がなぜそんなことを言うのか分からなかった。…東を悲しませるだけの結果にしか、ならないのに。
いや、しかしそれは、東の心を動かすことにはなるのかもしれなかった。
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Battle Field――近未来系ミステリ。毒から身を守るために作られたシェルターの中で生きる人々。そんな世界の小さな村で、幼い彼らの元へ訪れる災厄。王道(?)のフーダニットです。
Memory Modification
――異色ミステリ。その日は幸せな一日だったのか。主人公、叶田友彦は、自らに問う。
双極の匣
現在執筆中。四部編成の長編ミステリ。平和だと信じて疑わなかった村の、秘められた闇とは。
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1992/10/26