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自作の小説等を置いていったり、読了した本の感想をほんの少し書いたりしていきます。
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#6.Funeral march _死と、憎悪と、解明の糸_2




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 残念な事に、全員散り散りになってしまったらしい。当然だ。あんな暴力に訴えるような方法で、襲ってきたのだから。我を忘れる程に恐怖し、錯乱したのだろう。
「…まだ逃げて。すぐに追ってくるわ。…できるだけ遠くまで」
誰もいないことに零音はショックを受けたが、仕方ないと割り切って、先生と並んで走った。…指示がでるまで、ずっと。
 ようやく先生が停止の指示を出した時、そこは朝霧の家から最も遠いであろう、零音の家だった。学校がすぐ近くにあるが、まだ誰かが潜んでいるかもしれない。危険だった。…確かに、この場所で小休止するのが一番いいだろう。
「零音くん、先生!」
 零音の家の前にいた雪が、二人を見つけて声をかける。零音が手を挙げると、雪は駆け寄ってきて、零音に抱きついた。
「馬鹿…。一人で勝手に行っちゃうんだから…いつも。どれだけ心配するかなんて何も知らずに…」
 苦しいほどに、雪は零音を抱きしめた。それは、それほどまでに心配したんだという思いの表れ。だから零音は、申し訳なさそうに頭をかく。
「……先生にも言われたよ。…ごめんな。そうだよな、馬鹿だよな、俺…。何も考えられなくなるんだ。ああなると。…心配かけて、ごめん」
 ただただ平謝りする零音に、雪は微笑みかけた。許してくれたのだろう。
「…とりあえずは、良かったわ。零音くんが無事で。…今から皆を探す? それとも、…零音くんの家に籠る? 皆を探すのは、…流石に無理かもしれないわ」
 関先生が、周りを見渡しながら言った。今は夜だ。外灯はあれど、全方向に立っているわけではない。死角からアネモイの誰かが撃ってくることも十分考えられる。
「…とりあえずは、そうするかな……。安全は最優先だ。…窓のある部屋から覗いて、他の皆の内誰かが来たら、呼び入れようか…」
 これ以上危険に身を晒せば、二人にもっと迷惑をかける。だから零音は、安全な方を選択する。それが今考えられる最善策だろう。
 零音達は家の扉を開けて中に入る。そして扉を施錠して、窓の鍵もしっかり施錠を確認した。
 リビングには両親の死体があるので、零音は自分の部屋に二人を招き入れる。窓から外の道を見ることのできる部屋だった。
 電気は豆電球だけをつけた。カーテンは少しだけ開き、外を確認できるようにする。
 そうして少しばかり落ち着いてから、零音は二人に問いかける。
「どうして皆バラバラに逃げたんだ? 危険だって皆分かってるはずなのに…。たとえ爆発なんてめちゃくちゃな手段使われても、…やっぱり籠城は一番安全なはずなんだ。…籠る場所を変えてでも、皆で固まってた方が、いいはず…」
 至極当然の質問だった。皆で固まって逃げた方が、生存率も高くなるはずなのに。しかし、それは冷静になっているからこそ言える言葉だ。零音だって、何も考えずに何度も走り出している。
「人は、…理屈だけで行動出来ない時も、あるわ…。仕方ないことよ。零音くんも、他の皆も」
 関先生は言う。そして雪も、口を開く。
「……朝霧くんが、犯人は四人いるって言ってたのがよっぽど怖かったんだろうね…。それに、…その……」
 そこで雪が、言葉を詰まらせる。零音に言いたくない事があるのだろうか。
「…どうした?」
 しばらく言葉が出てこなかったのか、口をぱくぱくとさせていたが、…息を整えると、…雪は言った。
「…東くんが、いなくなってたの……」
 汗が一粒、頬から落ちた。零音の汗だった。
「な、…え……?」
 どういうことなのか理解できない零音に、雪は続けて説明する。
「…寝室は鍵がかかってたの…。それなのに、東くんがいなくて……。窓を見たら、…鍵のところがくり抜かれてて…。窓から東くんを、…犯人が連れ去ったみたいなの…」
 そこまで言われても、零音は分からなかった。いや、状況は分かった。だが、またしても東が連れ去られるという意味が分からない…。
「なんで東は、…そんなに犯人に連れ去られるんだ…おかしい、おかしい…」
 一度目は、疑問に感じても安堵が強く、それを薄れさせてくれた。しかし、今度ばかりはそうはいかない。東には、…何かがある。そう零音は確信する…。
 どうして東は、…犯人に利用されているのか。…それが分からなかった。…彼は何を知っているのだろうか…。
「そうね…東くんは、何か関わってるわ。…でも、今はそんなこと考えても仕方ない…。皆をまた集めて、ここに籠らなきゃ。…東くんに話を聞くのは、それからでもいいはずよ。……無事なら…」
 関先生は苦悶の表情を浮かべる。だから零音は、とりあえずはその話をやめることにした。しかし、やはり疑心は消えることはない。壁に背中をつけ、顎に手を当てながら、零音は考えに耽る…。

 水谷は、最初は必至で走り続けていたのだが、シェルター内の道路は一本で、いくら走っても結局は延々と回り続けることになる。冷静になりそれを思い出して、走るのをやめた。
 初めは後ろから舞宮が付いて来ていたのだが、今は姿が見えない。一緒にいてやればよかったな、と、今さら水谷は後悔した。
 辺りは暗い。外灯もここには無く、数十メートル先の数本だけが光を放っている。…冷静になればなるほど、孤立だけは避けなければ、という思いが強くなっていった。
「…くそ、皆どこ行ったんだ…。誰にも会わないってことは…もう何処かに隠れてるのか…?」
 何の音も聞こえない。静まりかえっていた。…だから水谷は仕方なく、歩きだす。
 さっきまで走っていたので、暑かったのか、水谷は着ている服の上着を脱ぐ。そしてそれを乱暴に投げ捨てた。
 それは地面に落ちるはずだったが、…痙攣したかのように、一度だけ、重力に逆らい、…少し浮く。そして、落ちた。
「……アネモイ……か…?」
振り返ると、…薄っすらと人影が見える。その姿は、…白い。しかし、…彼らは、天使ではない。人の命を奪ってきた、悪魔だ。
「……」
 自然と、体が震える。無理もなかった。相手は人殺しなのだから。…水谷は、その悪魔を見据え、言う。
「…殺されてたまるかよ…」
 心からの、反抗。
「…エウロスよ。こんばんは。……もうひとつ挨拶をしなきゃいけないかもね」
 どこかで聞いたことのある声だった。髪の毛の色が桃色で、顔もやつれている。…顔にも覚えはあるが、…あまりにも恐ろしい形相をしていたので、…記憶の中の誰なのかは分からない。
「さよならなんて言わせないぜ。誰に言われるのも嫌いだからな」
 水谷は笑う。汗は止まらないが、それでも顔だけは恐怖に歪めたりはしない。…それが彼の性分だった。勝負には、負けたくない。命がけであっても。
「…いいえ、殺すわ。終わらせるのよ。このシェルターの悲しみを、これで全部。…その為に全部消えるのは嫌だけど、…それでも、終わらせなきゃいけないの」
 彼女の苦悶の声は、水谷にも伝わる。しかし、どういうことなのか、彼に理解できるはずもない。
「…終わらせる? それで幸せになれるのは、今待ってる残された人々の少数だけなんだろ。お前は、捕まれば終わりなんだ。…悲しみって何だ。…お前は、何を言ってるんだ…」
 敵も、このシェルターに何か思いがあるのだろうか。彼女の目から流れてくる涙は、…何かを訴えている。しかし、殺されるわけにはいかない。何があろうと。
 エウロスが銃を構える。様々な感情が織り交ざっているのだろう、複雑な顔つきで、彼女は水谷を睨んでいた。
 そして水谷も睨み返す。負けない。負けるわけには、いかない。
 敵には銃。こっちには何もなかった。…しかし、諦めたりは絶対にしない。
「終わらせるもんか、俺達の世界を」
 そして水谷は、対峙する。
 勝利を願いながら。

 舞宮は、途中までは水谷と一緒に走っていたのだが、無我夢中で走れば彼の方が速いのは当然だ。今、一人きりになってそう痛感していた。
 周りを見渡しても、人気はない。舞宮は、両腕で自分の体を抱き、少しだけ身を震わせた。
「…誰か、…いないかな…」
 初めは一番冷静だったはずなのだが、こうなってしまえばその時のことなど自分でも信じられなかった。だから彼女は、情けなくなって笑う。
「…一人になんてならなきゃよかった。…皆にはやく会いたい……」
 外は暗かった。一刻も早く、安心できる仲間の元に帰りたかった。しかし、何処にいるのか。自分は、生きて仲間に会うことができるのか…。
 東のことを思えば、胸が痛くなる。彼女は、自分も知らないうちに、東の事を意識していた。いなくなる度に、胸が締め付けられるようになり、帰ってきた時には、ほっと安堵のため息をついた。
 しかし、東はおかしかった。どうして二度も連れ去られるのか。いや、二度目は確かに、孤立していたのは東だけだった。それを狙って、犯人がまた利用しようとしたのかもしれない。……それでも、彼だけは何か違っていた。最初から何か、諦めたような顔をしていた。…何か、知っているのだろうか。……でも、疑いたくない。彼女に東を疑うことなど、できなかった。
「…何なんだろうな、こんな時に、こんな風に…」
 自分の気持ちが、分からなくなる。仲間と会えないという孤独以外の、もう一つの孤独感に苛まれる。
「…でも、わかる。…東に、帰ってきてほしいということだけは……」
 空を見上げた。空は緑と藍色が混ざっていて、不思議な色だ。月は黄緑に輝いている。…シェルターの中からでも、綺麗だった。
 彼女は首を振って、歩き始める。とりあえず、仲間を探して。
 …そこに、一人の人影が、…現れる…。

 朝霧は、自分の家に戻ってきていた。何か心残りがあったのだろうか。本のあった部屋に向かう。
 そして、座り込む。…そのまま、何もせずに。
 ……その背中は、悲しみを映し出していた。このシェルターの悲劇を見つめ、疲れ果てた少年のぐちゃぐちゃになりかけている心を、映していた。
 彼は笑う。涙を流しながら、笑う。
 もう日常は、戻らないのだ…。
 

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Battle Field――近未来系ミステリ。毒から身を守るために作られたシェルターの中で生きる人々。そんな世界の小さな村で、幼い彼らの元へ訪れる災厄。王道(?)のフーダニットです。
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――異色ミステリ。その日は幸せな一日だったのか。主人公、叶田友彦は、自らに問う。
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現在執筆中。四部編成の長編ミステリ。平和だと信じて疑わなかった村の、秘められた闇とは。
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