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自作の小説等を置いていったり、読了した本の感想をほんの少し書いたりしていきます。
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#6.Funeral march _死と、憎悪と、解明の糸_3



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 静かな時間がゆっくりと過ぎる。
「…暗いな…。こんなところで三人って、変な気分…」
 雪は、ベッドに腰掛けている。関先生は、部屋の扉近くに座りこんでいた。
 零音は相変わらず、しきりに窓から外を覗いている。しかし、二十分程経った今も、誰かが通る様子はなかった。
 気持ちだけが先走って、最悪の想像が何度も膨らむ。その度に、零音は頭を振り、弱りきった心に喝を入れた。
「…誰か、…通ってくれ…。無事で、いてくれよ…」
 時刻は九時をまわっている。そろそろ疲労の色が、三人に見え始めていた。他の皆も疲れているに違いない。だから、今犯人に会うのは相当に危険なはずだ。…そんなことにならないように、零音は祈る。
 雪は、じっとしているのが耐えられないのか、部屋に置いてある物を手に取ってみたりしている。こんな時とはいえ、自分の部屋の物を物色されれば、恥ずかしくないわけもない。
「ゆ、雪。あんまり触るなよ…。恥ずかしいだろ、まったく…」
 ほとんど意識せずに、ただ色々と見ていただけらしいが、零音に言われて、雪ははっとする。
「あ、ご、ごめん…。そうだよね、つい…。何か、…ぼーっとしちゃって…」
 心も体も疲れているのだから、そうなってしまうのも無理はなかった。悲しいことを考えないようにと、自然と脳が思考を止めているのかもしれない。
 机の引き出しを二つほど開けていたので、雪は戻そうとする。しかし、気になる物を見つけて、それに手を伸ばした。
「零音くん、これ、何…? ラブレターなんかじゃ…」
 零音は振り返る。その顔がなんとも呆れた顔だったので、雪は、馬鹿な事を言ってしまったな、と思った。しかし、女の子はそういうことが気になってしまうのだ。
「俺はそんなのもらったことねーよ……、って」
 零音の声が止まる。その手紙を見た瞬間だった。雪が手にしている、ボロボロになった手紙…。
「あ、…そうだ、その手紙ッ…! 優磨の、手紙…!」
 二年前に見つけ、記憶と共に封印しようと、机の引き出しの奥にいれたその手紙が、今は何かを教えてくれる気がする。そう、そこには、確かに優磨の涙の訴えが記されていたのだ。
「え? ひ、平山くん…の?」
 関先生と雪は、同時にそんな風に驚いた。無理もない。二年前に死に、その悲しみを忘れようとしてきた。今その名前を聞くことになるなんて。
 零音はその手紙を雪に渡してもらい、広げる。青い模様が入った便せんに、走り書きしたような文章が、記されている…。
 零音は一度見たことがある。しかし、何度も忘れようとした。だから、全文を覚えてはいなかった。…そして今、それがここにある。
「内容って、…何だったの…?」
関先生が手紙を覗きこむ。…手紙には、こう書かれていた。

『この手紙を、零音は見つけてくれているだろうか。そうなればいいんだけど。
 手紙でしか伝えられないのは、やっぱり少し悲しい。
 悩んだ挙句に死を選んでしまったことは、どうか許してほしいと思ってる。
 このシェルターには、沢山の悪意が渦巻いていた。俺もそれに巻き込まれてしまっていた。いや、俺が生まれる前から、決まっていたことなのかもしれないけど。
 零音、もし手紙を読んでくれたなら。君は、皆は、…生き続けてほしいと願ってる。俺は止められなかったけど、君達は生きていられるはずだ。きっと。
―優磨』
 
 読み終わった後、三人はしばらく、呆然とするしかなかった…。
「……」
「……そうだ、…そう、こう書かれてたんだ…。なんで、忘れたんだ、俺は…! 悪夢にうなされるのが嫌で、こんな大事な事を忘れてた! そうだ、優磨は確かに、…この事件が起きるのを、知ってたんだッ!」
 零音は自分を責めた。どうして、これほど重大なことを、記憶の奥に封じてしまったのか。そう、優磨は二年前に知っていたのだ。このシェルター事件が起こることを……どこで知ったかは、分からないが…。
「…なんで、平山くんは、…知ってたの…? この、事件…。それに何…? 巻き込まれたって…」
 雪が頭を抱える。…確かに、この手紙は、ぼんやりと事件の事を記しながらも、その全容についてはまったく書かれていなかったのだ。零音にしか読まれないなら、全てを話してもいいはずなのに。
「…優磨が何か関わってて、…他にもかかわってる人がいるから、…とかか…?」
 そう言うと、零音は真っ先に思い浮かべた。
 そう、彼を。
「……まさかよ……」

 水谷は走る。今は逃げるしかなかった。
「くそ…どこまで逃げる気よ…!」
 エウロスはしつこく追ってきた。少なくとも三十代で、水谷の速さについてこられるのは驚いた。執念…なのだろうか。
 水谷は、左腕を押さえていた。その腕から、血が滴り落ちる。…逃げている時に撃たれたのだ。しかし、利き腕ではなかったので、彼は安心した。
「……まだ来やがる」
 水谷は、走りながら考えていた。今まで何人も人を殺してきたはずなのに、なぜかこの女は銃を撃つのが下手だった。
 何か複雑な心情が、手を震わせているのかもしれないが、プロとは到底呼べない腕前だった。
 相手は既に四発も発砲している。しかし、左腕を少しかすっただけだ。もしかしたら、銃を撃ったことがほとんどないのではないか。水谷は思い始めていた。
「…もう少しだ」
 彼が走るのは、学校。そこには武器があった。そう、あの時ノトスに投げつけた包丁だ。
 零音の家の前を通り過ぎ、校門を走り抜ける。……その時の零音の家のカーテンは、閉まり切っていた。
「よし…ッ」
水谷は、教室の窓を飛び越える。そして暗い教室内に入り、床に落ちていた包丁を拾い上げた。教室は、電気を消していなかったので明るかった。
「…はぁ、…やっと止まったわね…」
 エウロスが、窓を跨いで入ってきた。そして息を整えて、…ゆっくり銃を上げる。水谷は背中を向けたまま、顔だけをエウロスの方へ向けた。だから、彼が包丁を手に入れたのを、…エウロスは分からない。
「…死んでちょうだい…あの子の死が、無駄にならないように」
 エウロスが、引き金に指をかける。しかし、水谷は突然走り込んで来て、大きく振りかぶる…!
「…なッ」
 こうなれば、水谷の運動神経に勝てるはずもない。銃を向ける時間もない程に、水谷は包丁を振る。そして、その度に、エウロスの手を、足を傷つけた。エウロスが、苦悶の色を浮かべる。
「…う…」
 そこで、水谷が躊躇ってしまう。…それ以上に傷つけてしまうことを、躊躇う。…当然だ。彼は、子供なのだから。優しい、このシェルターの子供なのだから。
 そして、水谷は包丁で、銃を器用に弾き飛ばし、…エウロスの顔の前に刃を向けた。
「…もう終わりだ。やめよう。……あんたの負けだ。…これ以上続けて、何になるっていうんだよ…」
 水谷が、エウロスの顔を見つめ、そう諭す。彼女の目は、潤んでいた。
「…本当は嫌なんだろう? なら、…もういいじゃないか」
 エウロスは、そう言われると、耐えられなくなったのか、突然、泣き始めた。
「…ああ、あぁ…う…ぁぁ…」
 こんなに悲しんでまで、残された人々は人を殺さなければいけないのか。水谷は、少しばかり同情する…。
しかし、水谷は、…ひとつだけ、気になることがあった。聞いておかなければならないことだ。
「…あんた、…知ってる気がする。…いや、知ってる。…なあ、…まさか、さ」
 水谷は、包丁をゆっくりと降ろした。話をするには、降ろさなければならないと思ったからだ。こんな風に脅迫じみた状況のまま話をしたくなかった。
 …だが、それがいけなかった。
 エウロスが、弾かれて飛んで行った銃を、拾った。
「…あッ」
 一瞬の気の緩みが、その結果を招いてしまう。水谷は、自身の死を覚悟する――。
「……え、…」
 エウロスが、…自分のこめかみに、銃を突きつけた。泣きながら。
「ま、待てッ、やめろ!」
 水谷が制止しようとするが、もう遅かった。
「ごめんね…!」
 彼女の体が一瞬跳ね、…そして、後ろに仰け反って、倒れる…。最期に、後悔の言葉を遺して、…彼女は、…絶命した。
 そして静まりかえった教室に、…水谷は一人、ただ呆然とした表情で、立ち尽くす…。まさか、犯人に死なれるとは、思っていなかった。
「……くそ、…なんでこんなこと、…」
 狂っていた。今日だけで、命がどんどん消えていった。誰かに奪われ、あるいは自分で消し去り。…彼らは何を思い、このシェルターをバトルフィールドに仕立て上げたのだろうか。
「…どうして、こんな手段しか選べなかったんだ。…あんたたちは…」
 彼女の血は、床を真紅に染めていく。それを見ながら、水谷は誰に答えを求めるわけでもなく、呟いた。
 ……その時、後ろから、音がした。
「あーあ…」
 それは、この場には似つかわしくない声。気の抜けた声だった。
 水谷は瞬時に振り返る。教室の入り口の前に、男がいた。青い髪の、…ノトス。
 ノトスは既に、銃を構えていた。…それに、水谷が反応できるわけもない…。
「さよなら」
 引き金が、引かれる。
 窓に血が飛び散って、水谷が、倒れる。
 …そのまま、水谷は、…絶命する…。
 あまりにも無慈悲な死だった。ノトスは、特に気にする様子もなく、その場を立ち去る。まるで仕事を終えただけにすぎない。そう言うかのように。
 床に倒れた水谷の頭部からも血が流れ出る。そして、教室の床を彩る。
 あまりにも悲しい、人生の幕切れだった…。

 ノトスが、呟く。
「計画がどんどん狂ってるな…。だから二人に替えは無理だって言ったのに…」
 

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Battle Field――近未来系ミステリ。毒から身を守るために作られたシェルターの中で生きる人々。そんな世界の小さな村で、幼い彼らの元へ訪れる災厄。王道(?)のフーダニットです。
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――異色ミステリ。その日は幸せな一日だったのか。主人公、叶田友彦は、自らに問う。
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現在執筆中。四部編成の長編ミステリ。平和だと信じて疑わなかった村の、秘められた闇とは。
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