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自作の小説等を置いていったり、読了した本の感想をほんの少し書いたりしていきます。
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#11. Postlude _残された者


 

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―俺は飛び立つ。
 皆が辿り着けなかった未来に向かって。
 全てを失っても。
 再び生まれるものはあるはずだと、信じて。


 その日は晴れていた。女の人が、花壇の花に水をあげている。赤色、黄色、桃色。様々な色の花が咲き乱れていて、心が安らぐ風景だった。
 その花壇の先には、幼稚園の様な建物が見える。中からは、子供がはしゃぐ声が聞こえていて、…本当にここは幼稚園かもしれないと思える。
 けれど、…ここは幼稚園ではない。…施設内にいる子供の年齢は様々で、年長は十六歳程の子供もいた。
 砂を踏む音が聞こえて、来客が来た事に気付く。水をやっていた女性は、その来客に挨拶した。
「…こんにちは。何か御用ですか?」
 こんな所に用があるなら、一つしか考えられなかった。来客は、少年。…少年がここに来るということは、…彼もまた、…身よりを亡くした者…?
 そう、それは当たっている。彼にはもう身よりはいない。…彼は全てを失って、今ここにいるのだ。
 それでも、得られるものはある。
「…引き取りたい子がいるんです」


 一人だけ、皆の輪の中に入れない子がいた。その女の子は、部屋の片隅で本を読んでいた。ここには運悪く、同じくらいの年の子がいなかったのだ。そんな中、ここで長い間過ごしてきた。
「未来ちゃん、来て、来て」
 保護者代わりの保母が彼女を呼ぶ。その声は、何かうれしい事を予感させる声だった。だから読んでいた本を放り出して、関未来は保母のもとへ駆け寄る。
「なあに?」
 保母は何も言わない。けれど未来の背中を押した。急かすように。
「………」
 そして二人は対面する。悲しい物語の果てに残された二人は、…ここに出会う。
「…はじめまして」
 零音はしゃがんで、未来と同じ目線で挨拶をする。人見知りなのだろうか、未来は少し怯えながら、挨拶を返した。
「…はじめ、まして」
 零音は笑う。…だから未来も、良く分からなかったけれど笑った。悪い人ではなさそうだと、理解してくれたのだろうか。
「…お兄ちゃん、だあれ?」
 未来は聞く。…その質問に、口元に笑みを浮かべながら、零音は答えた。

「俺はね、…君のお母さんの、……弟なんだ」

 そして二人は歩きだした。
 まだ見ぬ、真っ白な世界へ。

 

 

 

 

 

 


――終
 

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