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自作の小説等を置いていったり、読了した本の感想をほんの少し書いたりしていきます。
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一章、小さな祝祭・・・其の一


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それは天への供物ではなく、地の底への生け贄でもない。
その全てが、幸せに包まれた悲劇だ。



 200×年 五月

 某県 景楽町――


 電話の音が鳴る。未だにベルの音が響く古い電話で、少々耳触りな呼び出し音だった。…僕は、その電話の受話器を慌てて取る。
「もしもし」
「おう、おはよう。今日は良い天気だな」
 元気の良い声が返って来る。
「そうだね。…久しぶりだなあ」
「最近雨続きだったからな。…よかったじゃないか。今日が晴れで」
「うん」
 今日は僕にとって、一年に一度の記念日だから。
「じゃあ、俺の家に来てくれよ。皆も待ってるから」
「…うん、じゃあまた」
「じゃあな」
 プツリ。そこで通話が切れた。
 僕は、台所で夕ご飯の支度をしている母さんに声をかける。
「それじゃ、行ってくるよ」
「早めに帰って来るのよ?」
 うん、と振り向きざまに答えて、僕は家を出た。

 空は、雲一つない晴天だった。碧く澄みきったその空が、僕の瞳に映る。僕は、……叶田友彦(かなたともひこ)は、大きく深呼吸をして、にっこりと笑う。
 今日という日には打って付けの天気だ。…今日は、僕の誕生日だから。クラスメイトの何人かが、数日前に誕生会をしようと提案してくれた。だから僕は、今からその友人の家に向かう。今日は、友人達と楽しい一日を過ごすのだ。
 周りを見渡せば、木々が茂っていたり、川が町を貫いていたり。この小さな町で、楽しめることは少ない。都会の子供が持っているようなゲーム機も、ここでは中々に珍しいものだ。
 友達と遊び、テレビ番組の話題で盛り上がったり。毎日やる事は変わらないのだけれど。友達同士の絆は、他の人達よりもずっと素晴らしい筈だ。僕はそう思っている。そして皆も思っているだろう。…僕達は本当に最高の仲間だと。
 家を出てすぐ右手側にある橋を渡る。この町に流れている川……美鳥川(みどりがわ)は、名前の通り綺麗で、鳥達も寄って来る程なのだが、何しろ長いし、町の真ん中を流れているものだから、橋も多くなる。大雨が降った次の日なんかは、木造の橋では壊れてしまって、わざわざ遠くの橋まで遠回りしなくてはいけないという時もあった。
 川沿いに、土手がある。この土手で僕らはよく遊ぶのだ。整地されたこの土手は、だいたい三キロ程下流まで続いていて、遊ぶには打って付けだった。たまに川に落ちてしまったりもするが、それはそれで面白かったり。夏になれば、この川で泳いだりもするくらいだし。
 ……つくづく田舎だなあ、と僕は思った。しかし、田舎という言葉を悪い意味で言っている訳ではない。ここはとてものどかで、過ごしやすい。都会に住む人は、田舎の事を寂れているだとか言うが、こちらは逆に、都会に対して偏見を持っている。きっと空気がとても汚れているんだとか、暗い人が多いんだとか。…住んでみるまで、その地の事は分からないものだ。少なくとも僕にとってこの景楽町は、最高の地だった。


 

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