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暗闇の中で、ラジオの周波数が合わない時の様な、耳につく雑音が聞こえ続けている。しかし、周りを何度見渡そうとも、目に映るのは、吸い込まれてしまいそうな漆黒の闇ばかりだった。
やがて、雑音の中に人の声らしきものが、途切れ途切れに聞こえてきた。ノイズと混じってしまったその声は、どんな言葉なのかを知ることが叶わない。…でも、この声はいつか絶対に、自身が聞いた声のはずだ。
思い出そうとしても、何も浮かばない。頭を叩こうとして、僕は、はっ、と気付いた。…今の自分は、意識だけの存在だった。手も、足も、動かす事が出来ない。
これは、夢なのだろうか。そう、この暗闇が、現実のどこかの光景であるはずもない。何処までも続いていきそうな、終わりのない暗黒。この広大な闇の空間に、風がなびいてもおかしくは感じられないだろう、そんな思いすら頭によぎる。
夢なんだ、僕はそう結論づけた。
「そうだよ。…それでいいんだ」
途端、そんな声が聞こえた。…はっきりと。
雑音が止んだのだ。あれほど耳障りな音が突然消え、僕は混乱した。しかしそう、これは夢なのだから、そんなことがあっても何もおかしくはない。天地が逆さまになったとしても、おかしくはない。
「その日は、幸せな一日でした」
頭の中まで、その声は響いてくる。……誰だろう…? さっきまでの雑音の中にいた声ではない。そして、何故この声だけは聞こえるのだろうか…?
「…その日は、幸せ、な…?」
僕は反芻する。その日とは、どの日のことだろう? 疑問であり、それを問う為の復唱でもあったが、ふいに、自分の感情が変化するのを感じた。…これは…。
「だからあの日は」
その声は、僕の思いを遮るように続く。
「素敵な一日として、僕の心に残るんだ」
素敵な、……一日――
そして世界は、真っ白に塗りつぶされた。
Memory Modification
――異色ミステリ。その日は幸せな一日だったのか。主人公、叶田友彦は、自らに問う。
双極の匣
現在執筆中。四部編成の長編ミステリ。平和だと信じて疑わなかった村の、秘められた闇とは。
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